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札幌高等裁判所 昭和38年(ネ)149号 判決 1965年3月30日

昭和三八年(ネ)第一四九号事件被控訴人

昭和三八年(ネ)第二〇四号事件控訴人

一審原告 北海道信用保証協会

右代表者理事 西村市松

右訴訟代理人弁護士 富田政儀

河谷泰昌

昭和三八年(ネ)第一四九号事件控訴人

昭和三八年(ネ)第二〇四号事件被控訴人

一審被告 位田吉三郎

右訴訟代理人弁護士 藤井正章

主文

一審被告の控訴を棄却する。

原判決中一審原告勝訴の部分を取り消す。

一審原告の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

一審原告主張の請求原因事実については、一審原告が訴外千代田火災海上保険株式会社に一審原告の主張の保険料を払い込んだのが事務管理によるものであるとの点を除き、当事者間に争いがない。

しかして当裁判所は、一審原告がその主張の保証委託契約により一審被告のために訴外北海道拓殖銀行に弁済をなしたことによる求償請求債権は時効により消滅したものと判断するものであり、その理由は原審と全く同一であるから、これに関する原判決理由の説示(原判決八枚目表冒頭から一〇枚目表六行目まで)を引用する。ただし同判決九枚目表一〇行目に「原告」とあるのは「被告」の誤記であるから訂正する。

次に一審原告がその主張の保険料を立替払込んだことによる立替金返還請求債権が商行為によって生じた債権であるかどうかについて考察する。一審原告は右保険料の立替払込みが事務管理としてなされたものであるから商行為にあたらないと主張する。しかしながら前記のとおり一審被告が本件保証委託契約締結の当時ゴム製造販売を業とする商人であったことは当事者間に争いがなく、一審被告が火災保険契約を締結する行為は営業のためにするものと推定され一審被告のために商行為となり、その保険料払込みも商行為たることは明らかである。そうすると一審原告が一審被告のためになした右保険料の立替払込みが委任事務の処理としてなされたか事務管理によってなされたかを問わず、右は一審原告のためにも商行為となるものといわなければならない。けだし当事者の一方のために商行為たる行為については双方に商法が適用されるのであって、商人の営業のためにする行為としては必ずしも法律行為たることを要せず、事務管理の如き準法律行為でもよいと解するのを相当とするからである。

本件において一審原告が右保険料の立替払込みをなした最終日が昭和二八年八月二三日であることは当事者間に争いがなく、一審原告の償還請求債権は即時に発生したものであることが明らかであるから、同日から消滅時効が進行を始めたものと解すべきところ、一審被告が昭和二九年四月一九日その一部を弁済したことは一審原告において自陳するとともに一審被告もこれを明らかに争わないから、同日承認により時効は中断され、改めて同日より五年を経過した昭和三四年四月一九日の経過をもって右債権は時効により消滅したものといわなければならない。

さすれば一審原告の本訴各請求はいずれも失当として棄却を免かれず、一審被告の本件控訴は理由があるから原判決中一審原告勝訴の部分を取り消し、一審原告の請求を棄却するとともに、一審原告の本件控訴は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 和田邦康 裁判官 田中恒朗 藤原康志)

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